相続人が認知症だった場合の不動産相続手続きと成年後見制度

相続人が認知症だった場合の不動産相続手続きと成年後見制度

相続人が認知症だった場合の不動産相続手続きと成年後見制度

相続人が認知症を患っている場合、相続手続きには特別な対応が必要です。
特に相続人が認知症で判断能力が不十分な場合、通常の相続手続きや遺産分割協議が進まないことがしばしばあります。
このようなケースでは、成年後見制度が重要な役割を果たします。
成年後見人が認知症の相続人に代わり、相続手続きや不動産の名義変更、売却などの重要な意思決定を行います。
本記事では、認知症の相続人がいる場合の具体的な相続手続きの流れ、成年後見制度の役割、そして後見人が行うべき対応を詳しく解説していきます。
相続人が認知症の場合でも、適切な手続きを進めるために何をすべきかを理解し、スムーズに相続手続きを進めるためのポイントを確認しましょう。

 

1. 認知症の相続人がいる場合の不動産相続手続き

相続手続きにおいて、相続人全員が判断能力を持ち、自らの意思で遺産分割協議に参加することが必要です。
しかし、相続人が認知症などで判断能力を欠いている場合、その相続人が意思を示すことができないため、協議や手続きが進まなくなることがあります。
特に、不動産相続においては、名義変更や売却などの重要な手続きを進める必要があり、相続人全員の同意が不可欠です。
認知症の相続人がいる場合、成年後見制度を利用することで、その相続人に代わって後見人が手続きを進めます。

1-1. 相続人が認知症の際に直面する主な問題

相続人が認知症である場合、以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 遺産分割協議が進まない
    遺産分割協議は相続人全員の同意が必要ですが、認知症の相続人が意思表示できない場合、協議を進めることができません。
  • 財産管理が適切に行われない
    認知症の相続人が自ら財産を管理できない場合、財産の適切な運用や管理が困難になります。
  • 相続登記や名義変更ができない
    不動産の名義変更や登記手続きには相続人全員の同意が必要ですが、認知症の相続人が手続きを行うことができないため、手続きが滞ることがあります。

これらの問題を解決するためには、成年後見制度を利用し、後見人を選任することが必要です。

 

2. 成年後見制度とは?

2-1. 成年後見制度の基本的な仕組み

成年後見制度は、認知症や精神疾患などで判断能力が不十分な人のために、財産管理や法律行為を代行するための制度です。
親や相続人が認知症を患っている場合、その人が自ら相続手続きや財産管理を行うことができないため、成年後見人が選任され、手続きを進める役割を担います。

成年後見制度には、次の2種類があります。

  • 法定後見制度:判断能力を失った後に、家庭裁判所が成年後見人を選任します。
  • 任意後見制度:本人が判断能力を失う前に、あらかじめ自分で後見人を指定しておく制度です。

不動産相続手続きに関しては、相続人がすでに認知症である場合、法定後見制度を利用して家庭裁判所に成年後見人を選任してもらうことが一般的です。

2-2. 成年後見人の役割

成年後見人は、認知症の相続人に代わり、相続手続きや財産管理を行います。
具体的には以下の役割を果たします。

  • 遺産分割協議への参加
    成年後見人は、相続人の利益を守りながら、遺産分割協議に参加し、相続分の分配について同意を行います。
  • 財産管理の代行
    後見人は、相続人に代わって不動産や金融資産を管理し、相続手続きの一環として財産を適切に運用します。
  • 相続登記の手続き
    成年後見人が法務局に対して不動産の相続登記を行い、名義変更を進めます。

成年後見人が選任されることで、相続手続きがスムーズに進むようになり、相続人の利益が守られます。

 

3. 相続手続きが進まない場合のリスク

3-1. 遺産分割協議が進まない

認知症の相続人がいる場合、相続人全員で行うべき遺産分割協議が進まなくなることがあります。
これは、相続人全員の同意がなければ協議が成立しないためであり、認知症の相続人が意思表示を行うことができないと、他の相続人の同意を得ても協議を完了させることができません。

3-2. 財産管理が不適切になるリスク

認知症の相続人が財産を管理できない場合、財産の運用や管理が適切に行われない可能性があります。
例えば、不動産の賃貸収入がある場合、適切な管理が行われなければその収益が減少することがあります。
また、不動産の価値を保つためのメンテナンスが行われない場合、財産価値が低下するリスクもあります。

3-3. 手続きの遅延とトラブルの発生

成年後見人が選任されず、相続手続きが進まない場合、相続手続きが長期化することがあります。
また、相続人間での意見の相違やトラブルが発生する可能性が高まります。
特に、不動産の相続や分配に関しては、相続人同士の利害関係が絡むため、適切な対応が行われなければ争いに発展するリスクが高まります。

 

4. 成年後見人の選任手続き

4-1. 成年後見人の選任を家庭裁判所に申請する手順

成年後見人を選任するためには、家庭裁判所に申請を行います。
この申請には、次のような書類が必要です。

  • 親の診断書
    親が認知症であることを証明するための診断書が必要です。
  • 財産目録
    相続財産の全体像を示すために、財産目録を作成し、提出します。
  • 成年後見人候補者の情報
    成年後見人として選任される候補者の情報を記載します。
    親族が後見人になる場合もありますが、家庭裁判所が弁護士や司法書士を選任する場合もあります。

4-2. 裁判所での審査と選任までの期間

家庭裁判所に申請を行うと、裁判所が審査を行い、成年後見人を選任します。
この審査には通常、2〜3か月ほどかかります。
審査が完了し、成年後見人が選任されると、後見人が相続手続きに関与することができるようになります。

 

5. 成年後見人による相続手続きの流れ

成年後見人が選任された後、相続手続きや遺産分割協議、不動産の名義変更が進められます。
ここでは、成年後見人が関与する具体的な手続きの流れを紹介します。

5-1. 相続手続きの開始

成年後見人が選任されると、まずは遺産分割協議が行われます。
後見人は、相続人の代理として協議に参加し、相続人の利益を守りながら協議内容に同意します。
この協議が完了すると、相続財産の分配が行われます。

5-2. 相続登記の手続き

遺産分割協議が完了した後、成年後見人は不動産の相続登記を進めます。
不動産の名義変更には法務局に必要書類を提出し、登記手続きを行います。
相続登記が完了すると、相続人の名義で不動産が登録されます。

5-3. 不動産の売却手続き

相続した不動産を売却する場合、成年後見人が家庭裁判所の許可を得て、売却手続きを進めます。
後見人は相続人の利益を最優先に考え、最適な条件で不動産を売却するよう努めます。

 

6. 相続手続きの注意点と成年後見制度のメリット

相続人が認知症の場合、成年後見制度を利用することで相続手続きがスムーズに進むというメリットがありますが、注意点もいくつかあります。

6-1. 成年後見制度の費用

成年後見制度を利用する際には、家庭裁判所での手続き費用や、後見人に支払う報酬が発生します。
報酬の額は後見人が専門家の場合に特に高額になることが多いため、事前に費用の見積もりを確認しておくことが重要です。

6-2. 後見人の選任に時間がかかる

成年後見人の選任手続きには時間がかかるため、相続手続きを進めるにあたっては早めに後見人の選任を開始することが推奨されます。

 

7. よくある質問(Q&A)

Q1. 成年後見人を選任するにはどれくらいの時間がかかりますか?

A:通常、成年後見人の選任には2〜3か月の審査期間が必要です。
場合によっては、家庭裁判所の混雑状況などにより、さらに時間がかかることもあります。

Q2. 成年後見人が行う具体的な役割とは何ですか?

A:成年後見人は、相続人に代わって遺産分割協議に参加し、相続手続きを進めます。
また、相続不動産の名義変更や売却手続きも後見人が行います。

Q3. 成年後見制度を利用しないと相続手続きは進められませんか?

A:認知症の相続人がいる場合、成年後見制度を利用しないと遺産分割協議や相続登記を進めることができません。
成年後見人を選任することで、手続きがスムーズに進むようになります。

 

8. 相続不動産の売却は不動産一括査定がおすすめ

相続した不動産を売却する際には、不動産一括査定サービスを活用することが推奨されます。
複数の不動産会社から査定を受けることで、最適な価格で売却を進めることが可能です。
成年後見人が選任されている場合でも、相続人の利益を守りつつ売却を進めるために、一括査定サービスは非常に有効です。

 

9. まとめ

相続人が認知症の場合、相続手続きには成年後見制度が不可欠です。
成年後見人が選任されることで、遺産分割協議や不動産相続手続きを円滑に進めることが可能になります。
不動産売却についても、成年後見人が裁判所の許可を得て適切に手続きを進めることが求められます。
最終的に、不動産売却を効率的に進めるために不動産一括査定を利用することもおすすめです。

 

相続不動産売却の基礎知識

不動産売却の流れ|6ステップで不動産売却の流れを把握

 不動産売却の流れを全く知らない人でもわかるように、不動産売却の全体の流れを売主の視点で6つのステップに分けて解説。
不動産売却は、ほとんどの方が不動産売却が初めてという方が多いと思います。不動産売却の流れや知識がないまま進めることに不安になることもあるでしょう。

 不動産売却は、以下のように①不動産仲介会社に売却相談・査定依頼、②売却を依頼する不動産仲介会社と媒介契約を締結、③不動産の販売活動を開始、④不動産売買契約を締結、⑤不動産物件の引渡し・決済、⑥不動産売却の確定申告の6つのステップで進んでいきます。

不動産売却の流れの全体像

不動産の売却にかかる期間は3ヶ月~6ヶ月程度です。
それぞれの5つのステップについて、解説していきます。

STEP1:不動産仲介会社に売却相談と査定依頼
不動産売買の仲介を行っている会社に売却相談と売却価格の査定の依頼をします。
関連記事:不動産売却の簡易査定と訪問査定の違いとは?失敗しないための完全ガイド

STEP2:不動産仲介会社と媒介契約を締結
不動産売買の仲介会社を選んだら、売主と不動産仲介会社との間で媒介契約を結びます。

STEP3:不動産の販売活動を開始
媒介契約締結後、不動産仲介会社が不動産の売却活動を開始します。

STEP4:不動産売買契約を締結
買主が決定したら、不動産仲介会社が「買主の住宅ローン事前審査」と「不動産の最終調査」行い、不動産売買契約を締結いたします。

STEP5:不動産物件の引渡し・決済
売買契約で定めた期日で決済と引渡しが行われます。
売主・売主側仲介業者・買主・買主側仲介業者と司法書士の五者が、買主が住宅ローンの融資を受ける金融機関に集まって契約手続きするケースが多いです。

STEP6:不動産売却の確定申告
売主は不動産売却によって得た利益にかかる税金を納付するために売主は確定申告を行う必要があります。
時期は毎年2月中旬~3月中旬までに行います。

不動産売却の流れについて詳細は以下のコラムをご覧ください。
不動産売却の流れを図解|査定・契約・決済のスケジュール

 

不動産売却の媒介契約の種類

不動産売却を依頼する仲介会社を選んだら、売主と不動産仲介会社との間で媒介契約を結びます。

媒介契約の種類と比較

媒介契約とは、売却が成立したときの不動産仲介会社に支払う報酬額や販売活動方法を取り決める契約です。
媒介契約は①専属専任媒介契約、②専任媒介契約、③一般媒介契約の3種類あります。
売却する不動産物件やご自身の状況をもとに媒介契約の種類を選択しましょう。
以下、媒介契約の特徴をご参考にしてください。

①専属専任媒介契約
媒介契約を締結できる不動産仲介会社数…1社
買手を自分で見つけた場合の仲介手数料…必要
指定流通機構レインズの登録…義務
販売活動の報告頻度…1週間に1回以上

②専任媒介契約
媒介契約を締結できる不動産仲介会社数…1社
買手を自分で見つけた場合の仲介手数料…
指定流通機構レインズの登録…義務
販売活動の報告頻度…2週間に1回以上

③一般媒介契約
媒介契約を締結できる不動産仲介会社数…複数可
買手を自分で見つけた場合の仲介手数料…
指定流通機構レインズの登録…任意
販売活動の報告頻度…任意

 

※ポイント
①専属専任媒介契約、②専任媒介契約は販売活動を依頼する不動産仲介会社の数が1社と制限されます。
①専属専任媒介契約は買手を自分で見つけることもできますが、仲介手数料を不動産仲介会社に仲介手数料を支払う必要があり、実質的に自分で販売活動することを制限されています。

※注意点
あとからもめないように媒介契約を結ぶ際に、把握している建物の雨漏りや周辺の騒音等、売却する不動産の状況を報告書(告知書)を記入しましょう。また、建物の設備等の内容や設備の故障を明記する付帯設備表という書類に記入しましょう。

 

不動産売買の仲介手数料の計算式【簡易計算式】

不動産売買の仲介手数料のわかりやすく簡易計算式での計算方法を解説していきます。

①不動産売買価格400万円以上
⇒不動産売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税

②不動産売買価格200万円以上400万円未満
⇒不動産売買価格(税抜)×4%+2万円+消費税

③不動産売買価格200万円未満
⇒不動産売買価格(税抜)×5%+消費税

※低廉な空き家の仲介手数料
上限30万円(税抜)+消費税

※売主が宅建業者の場合は、建物の価格に消費税が掛かります。
その場合は不動産売買価格から消費税額を除いた金額を元に、不動産売買の仲介手数料を計算します。

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